もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「わからない・・・どうして私・・・泣いてるの・・・?」
私は自分の胸に当てている手をギュッと握った。

「鈴・・・」
嶺は握りしめている私の手を、包み込む。
そして今度は強く強く握り、私の体を強く抱きしめた。

「今だけ。今だけでいいんだ。」
「・・・」
「鈴を・・・抱きしめさせてほしい・・・。」

私の心が震える。

なぜ震えるのかはわからない。

でもその時、私ははじめて自分の中に眠る記憶の世界に、過去の私が閉じ込められているかのような気がした。
そして、そんな私自身を閉じ込めているのは・・・私自身のような気がした。
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