もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
何も言わずに私の横に立ち、ポケットに手を入れて同じように海を見つめる恭。

ちらりと私を見た恭は何か言いたそうだったけど、何も言わない。


そうだった。

私たちの間にはいつも必要以上の言葉はいらなくて、それでもお互いどこかが通じ合えていた。

うんん。
通じ合うようになっていたんだ。

まるで遠い昔のことのように思いだす。


沈む夕日を見てから私は大きく深呼吸をした。

「帰るぞ。」
そう言って恭は海の方へ背中を向けて私が立ち上がるのを待つ。
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