もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
私はその言葉に大きな流木から立ち上がった。
「おっと・・・」
熱があったことを忘れていた私。
急に立ち上がり体が大きく傾くとすぐに恭が支えてくれた。

「ばか」
低い声でささやく恭。

恭の『ばか』すらすでに懐かしい・・・。

いつだってこうして恭は私を支えてくれていた。

恭がいてくれたから私は今もこうして生きているんだ。

「帰るぞ」
「・・・」
恭は私が自分の足で歩けることを確認すると、私の方を振り返りながら歩き始めた。

私は大きな恭の体に隠れるようにしてその後ろを歩く。

この距離。

手を伸ばせば届くけど、決して近すぎない距離。
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