もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
『笑わなくていい。話さなくたっていい。何もしなくたっていい。つらいなら泣けばいい。でも、命だけは投げ出すな。命だけは捨てんな。頼むから。』

恭の言葉がどこからか聞こえてくる。

私は悔しくて、自分の胸を強くたたいた。

止まれ!治まれ!止まって!

焦れば焦るほど呼吸は落ち着かない。

その時

ふわっと温かいぬくもりに体が包み込まれる。
自分の胸をたたいていた両手ごと包まれる。

「ばか」

不意に頭上から聞こえる声に私の呼吸は驚くほど落ち着いてくる。
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