もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「じゃあ、出かけようか」
嶺の言葉に、私を見つめていた恭の視線が再び自分の茶碗にうつった。
「はい」


私が出かける支度をしていると、茶の間から出勤前の恭と、出かける支度を済ませた嶺の会話が聞こえて来た。
「この薬は彼女が頭痛を感じた時に飲む薬です。多めの水で飲ませてください。効き始めるまでに30分ほどかかります。それまでは安静にして、横になれるときは横にしてあげてください。」
「はい」
真剣な声の嶺。
「それから、過呼吸になった時の対応ですが、袋を口に当てる方法は素人には少し難しいです。一番は過呼吸の原因になった要因から彼女を遠ざけること。そして呼吸が楽な体勢をとってあげてください。横になるよりは座った状態で胸を前かがみにせずに、呼吸がしやすいよう頭を支えてあげるといいと思います。苦しいとどうしてもぐっと前かがみになり胸を縮めがちですが、胸を開くような体勢だといいと思います。」
恭は私に何かあった時の対処法を嶺に話してくれていた。

話を聞きながら、そんなことを考えながら恭は今まで私を支えてくれていたのだと改めて知ることが多かった。さすが精神科医だ・・・。
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