死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

「あづさ、今日の昼と夜ご飯どうすんの? 朝ごはんは食ってくとして」

「え、飯食ってっていいのか?」

「ああ。食パンとハムエッグくらいしかないけど、それでもよければ」

 作ったの俺じゃなくて爽月さんだけどな。

「全然いい!ありがと!」

 そういって、あづは歯を出して笑った。……素直だな。

「ああ。それで、昼と夜は?」

「んー、まぁどうにかするよ。母親にお金もらって」

「貰えるのか?」

「……うん、へーき」

 明らかな間があった。それに、目を逸らされた。

 でも、ここで聞き返して本当かどうか確かめようとしたところで、ちゃんと答えてくれるのか?

 あづが自分から言うようにならなきゃ、意味がない。

「……そっか。飯食いにダイニングいくか」

「おう!」

 あづは笑って、ダイニングに向かう俺の後をついてきた。

**

 朝ごはんを食べ終わると、あづは学校があるから、家に帰ると言った。

「奈々、泊めてくれてありがとな。服はそのうち洗って返すから」

 玄関にいるあづが俺を見ながら言う。

「……ああ。また来いよ。あづだったら、いつでも泊めてやるから」

「……うん、ありがと。またな」

 そういうと、あづは笑って家に帰って行った。

 俺は爽月さんにあづが帰ったのを連絡をしたあと、ダイニングのソファの上で頭をひねった。

 これでよかったんだろうか。

 あんなやすやすと帰してよかったのか?

 いつもよりは明らかに元気がなかったのに。

「……でも、帰さなかったところでなんだよな」

  帰さなければ家のことを話してくれるわけでもないだろうし、しょうがないよな。

「はぁ」

 やっぱり爽月さんにも言われたけど、もっと遊んで、心開かせないとだよな。でないと、手遅れになってしまう。
 俺はぎゅっと拳を握りしめた。

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