死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

《ん? 恵美から俺らに電話きてないか? もしかしたらあづのことかも!》

 恵美が俺と潤と自分のLINEのグループを作ったみたいで、そこから電話が来ていた。

「え? 潤、恵美と一緒じゃないのか?」

《ああ。あいつ今日、女友達と遊ぶって言ってたから》

「そうか。潤、一旦切るぞ」

《了解!》

「《恵美どうした?》」

 通話に出た俺と潤の声が被った。

《あたし、やばいもの見ちゃった。……あづがコンビニの駐車場に座り込んで、煙草吸って、お酒飲んでた。ピアスとかジャらジャら付けてるガラの悪い子達と一緒に》

「……え、それ、本当なのか?」

 信じられなくて思わずそう尋ねてしまった。あづは確かにちょっと喧嘩が好きだったりするとこはあるけど、そんなことする奴じゃないハズだ。

《嘘なわけないじゃん!ちゃんとこの目で見たんだから!でもあづいつもと様子違ったから、もしかしたら見間違いの可能性もあるかも。あづ、パーカーのフードで顔隠してたの。青髪が見えたし、背丈もあづと同じくらいで、たぶん制服も同じ学校のだったから、間違いないと思うけど》


《……恵美、あづのそばにいた奴の中に、金髪で、両耳にピアスをつけてる奴がいなかったか?》

《いたよ!両耳と舌にピアスつけてる金髪の子!》

《……怜央だ。あいつ、まだあづを不良の道に引きずり込もうとしてんのか》

「怜央? ……もしかして、あづが荒れた時につるんでた奴か? 」

《話が早いな、奈々。恵美、あづがいたコンビニの場所どこだ?》

(ひづめ)町一丁目だよ!》

「じゃあそのコンビニのそばで落ち合おう。着いたら連絡する」

 まだそこにいるといいんだけど。

《奈々、身体は平気か?不良達に酒とか無理矢理のまされたりする可能性もあるし、お前はやめといた方が良いんじゃないか?》

「……身体はへーき。万が一俺が酒のまされそうになったら、潤が止めてくれ」

《クッ。了解。じゃ、また後でな。奈々は恵美と一緒に来いよ。どっかで合流して》

「余命の話した途端大袈裟に心配してんじゃねーよ。それだと恵美が手間だろ」

《でも》

「奈々絵、コンビニまで送ってく」

 爽月さんが俺の肩を叩いて言ってくる。

「いいんですか?」

「ああ、俺のことは訪問看護の人が来てるとでも言っとけよ」

「爽月さんのことをそんなふうには言いたくないです!」

 訪問看護で来る人には、仕事だからって言うのだけで来る人もいるだろうけど、爽月さんはそういうのではなくて。俺にお詫びがしたくてきてくれてるから。そんな人を訪問看護の人だなんて言いたくない。

 爽月さんが目を丸くして俺を見る。どうやら相当びっくりしてるみたいだ。

「……駐車場とかじゃなくて、コンビニが数メートル先にあるとこで下ろしてくれますか? それだったら、二人に一緒に来たのがバレないと思うので」

「りょーかい」

 俺の頭を撫でて爽月さんは笑う。

「潤、恵美、俺は大丈夫だから心配しなくていい。今日は調子いいんだ。着いたら連絡する」

《わかった、無理はすんなよ》

《気をつけてね、奈々!》

 潤につづいて恵美が言う。

「お前らもな、恵美、潤」

 俺は笑って通話を切った。
< 104 / 170 >

この作品をシェア

pagetop