死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
《本当に俺の両親がクソで申し訳ない!! 本当にダメだよな、あいつら》
《親のことをそんなふうに言うもんじゃないですよ。……まぁ、俺も否定はできませんけど》
「ああ、否定しなくていい。寧ろするな。奈々絵はそのままでいいから。親戚に嫌われてるのなんて気にするな」
「はい、ありがとうございます」
 俺は笑って礼を言った。
《迎えが必要だったら連絡しろよ、すぐ行くから》
「ありがとうございます。まだ帰っていいとか言われてないので、わかり次第すぐに連絡しますね」
《ああ。それじゃあ、またな》
「はい、また」
 爽月さんの言葉に頷くと、俺は通話を切った。

「あづ、お待たせ」
 電話が終わったので、俺は病院に戻って、あづに声をかけた。
「ああ、うん」
 浮かない顔で、あづは頷く。
「どうかしたか?」
「奈々、あのさ……俺は、草加達が奈々のこと虐めてたの、本当に知らなくて。俺はあいつらが怜央と友達だったから、一緒にいただけだから」
「ああ。そんなこと、言われなくてもわかってる。それにあれは、どう見ても友達への態度じゃなかったからな」
「うるせ」
「……あづは酒何杯くらい飲んだ?」
「確か缶一個分くらい」
 結構飲んでるな。
「そか。身体は平気か?」
 そういった瞬間、あづはあからさまに俺から目を逸らした。
「あー、うん。今はどこも痛くない」
「ならよかった。でも手当はするからな」
「うん。奈々は? 大丈夫か? 結構盛大に酒かけられてたけど」
「ああ。さっき検査受けたけど、問題ないって」
「はぁー。よかった。マジで奈々が酒かけられた時相当焦ったから」
 ほっとした顔で俺の頭を触りながら、あづは言う。
「ありがとう、焦ってくれて」
「え?」
「……俺、友達が自分のために喧嘩してくれんの、初めて見た。すごく嬉しかった。びっくりしたけど」
 そう言って、ゆっくりと口元をほころばせる。
「俺はただ、あいつらの行動が我慢ならなかっただけだから」
「あづと同じ学校だったらよかったな。そしたら、あんなふうにいじめを受けずに済んだのに」
 涙が頬を伝う。
 考えるのが、あまりに今更すぎる。
 それにたぶん、もし俺とあづが同じ学校で、俺がいじめられてなかったら、俺が自殺未遂をしてあづに助けられるなんてことには、絶対にならなかっただろうな。
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