死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「奈々、その……過去はなくならないし、奈々が生きるのが後ろめたいって思ってるのは俺にはどうにもできないかもしんねーけど、少なくとも俺らが一緒にいる限りは、もう二度とあんな想いさせないから。……さっきは守れなくてごめん。……次こそ絶対、俺が奈々を守るから」
あづが俺をしっかりと見据えて言う。
「……ハハ。お前、本当に最高だな」
涙を拭いながら笑う。
やっぱり、あづは馬鹿だ。
虐待のせいで今も怪我が痛くて仕方がないハズなのに、こんなことを言うなんて。
でもそのあづの馬鹿さが、今の俺にとってすごく必要なものだった。
「……なぁあづ、一生隣にいろよ」
あづはきっと、その一生があと三ヶ月で終わるなんて夢にも思っていないんだろうな。それがわかっててこんなことを言う俺は、どれだけ残酷なんだろう。
そうわかっていても、言わずにはいられなかった。本当に、心の底から一生隣にいて欲しいと思ったから。
「ああ、居るよ。奈々こそ、俺のそばにいろよ」
「ああ、そうだな。……死ぬまでお前のそばにいたいな」
死が二人を分かつまでなんて、随分漫画じみた台詞かもしれないけれど、それでも死ぬまで一緒にいたい。……いや叶うことなら、死んでも一緒にいたいな。
「いたいじゃなくて、いるんだよ!」
「ハハ。ああ、そうだな」
そう言って、俺は笑って、あづと頷き合った。
「青春ドラマみたーい」
恵美がドアを開けて、呆れた様子で言う。
あづはそれに、顔をリンゴみたいに真っ赤にして突っ込んだ。
「ちげーよバカ!つか恵美、事情聴取は?」
「今終わったわよ」
恵美が出てきた部屋から、怜央と潤と警察が顔を出す。
会議室から警察と穂稀先生と、草加とその母親が出てくる。
「まだ帰ってなかったのか」
警察がいう。
「あの、俺の処分は」
「一ヶ月の停学だよ。君も、草加君も」
どうやら退学にはならなかったらしい。はあ。よかった。思わず安堵の息が漏れた。
「はあ。今回は退学にならなかったからよかったけど、もうこんなことやめてよね、空我」
穂稀先生はあくまでも息子を心配する母親のふりをするようだ。
「うん」
下を向いて、あづは頷く。