死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

「――目の前で死ねば、助けてくれると思ったんじゃないのか」
 それは、俺が一番聞きたくない言葉だった。

「思ってない。帰れ」
 掠れた自信なさげな声が漏れた。

「奈々絵」
「帰れ!!」
 大声で言う。

 俺はもう何も聞きたくないと言うかのように、布団を頭にかぶった。

「また来る」
 亜月がいう。
「亜月くん、また窓から侵入しようとしたら困るから、しょうがないので、次回から面会は許可しますけど、今日みたいに面倒を起こしたらすぐに帰らせますからね。あと面会の時は、看護師付き添わせますから!」

「よっしゃ! ありがとうございます! またな、奈々絵!」

 布団に向かって声をかけられる。
 何がまた来るだ。
 くそが!!
 親戚も同級生も、みんな死ねって言ったんだ。俺が息をしてるのは許されない。
 それでも、本当は怖かった。
 飛び降りようとした時、足が震えた。涙が流れそうになった。
 けれど、それがなんだ?
 怖いことは死なない理由にはならない。
 死刑を言い渡された人間が、そんな感情一つで罰が軽くならないのと同じように。
 死ねって言われたら、死ななきゃいけない。
 だって、そうしないと毎日死ねって言われるんだから。そんなの地獄でしかない。それなのに、何で否定しなかった。

 嘘でも否定しろよ!! でないと、あいつは俺がまた死にに行ったら、また止めるのに。
 涙が頬を伝う。
 ……本当は死にたくない。
 俺は布団をぎゅっと握りしめた。
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