死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「……はァ。そうかよ。お前はそんなに母親が大事なのかよ。俺より母親が大事なのか?」
「ち、違う!」
図星なのを悟られたくなくて、慌てて否定する。
「なら何で相談の一つもしない?」
瞳から大粒の涙が溢れ出す。
「ごめん。ごめん。……でも、言えない」
「はぁ。……もうやめようぜ、この話。俺はあづを泣かせたいわけじゃないし」
ため息をついて、怜央は残りのアイスを食べる。怜央の食べ方は、まるでアイスに八つ当たりをしているみたいに雑だった。
「本当にごめん、怜央」
「……いいよ別に。うわっ、アイス溶けてる。あづのもすげえ溶けてるぞ」
俺の態度なんて気にしてないふうを装って、怜央は言う。口は笑っていたけれど、目が笑っていなかった。怜央の目は、ほんの少し潤んでいた。それに気づいてないふりをして、頷く。
アイスを食べたら今度はちゃんと苺の味がした。それでも、こんな状況では全く美味しいと思えなかった。
突然、スマフォが音を立てる。
『空我、友達に助けてっていったわね』
ポケットからスマフォを取り出して電源をつけると、母さんからLINEが来ていた。
絶望。あのストラップについていたのは、発信機でも監視カメラでもなく、盗聴器だった。実の息子を盗聴する親って……。程なくして、酷い事実に気づく。盗聴器なら、最初から母さんは俺がどうせ助けを求めるって思っていたことにならないか。え、俺全然母さんに信用されてないじゃん。嘘。……なんで信頼しないんだよ。俺、あんなに泣きながら言ったのに。逃がしてくださいって、実の親に敬語まで使って。……ああ、俺が子供じゃなくて、所有物だからか。物だからか。まぁ物は、言うことを聞かないで、思い通りに動いてくれないこともあるからな。老朽化で壊れたりする機械なんて、そのいい例だろう。……俺は機械と同義なのか? はぁ。自分のことを物だと思ったら、さらに心が傷ついた。きつ。
『何か言いなさいよ』
また、母さんからLINEがきた。
まずい。早く返信しないと、母さんの機嫌がさらに悪くなる。
『ごめんなさい』
許して貰えないのは承知の上で謝罪の言葉を送る。
『謝って済んだら警察はいらないわ。この前あげたお小遣いは没収よ。後でポストに入れて置いて』
とんでもない返信が返ってきた。
外出を許可したくせに外で生活するお金はあげませんって、矛盾がひどい。
『金がなかったらどうやって生活すんだよ』
手を震わせながら、どうにかしてそう返事を打つ。
『野宿でもすれば? 食事は、ゴミ捨て場でも漁って食べれるもの探しなさい。それか、たかりでもすれば?』
あまりにひどい返信をみて、さらに冷や汗が吹きだす。この母親は俺を殺す気なのだろうか。
『母さんは俺が死んでもいいわけ』
投げやりになって、そんな返信を打った。
『事故ならいいわよ。自殺だと困るけど』
実の息子に死んでいいって言う親ってなんなんだよ。