死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
返ってきた言葉があまりにひどすぎて、返事を打つのも嫌になる。
自殺だと、俺と母さんが不仲なのが、俺の義父さんにバレる可能性があるからだろうな。はぁ……。もういっそのこと、本当にたかりをしてやろうか。
別にたかりをしたら怒るとは言ってないし。
それに何より、気になる。俺が本当にたかりをしたら、母さんがどんな反応をするのか。もしかしたら、優しくしてくれるかも。優しい声で、もう犯罪はしないでって言うかも。怒らないってことは、優しくしてくれる可能性があるってことだから。
なんで俺は、母親の言葉に左右されて、悪いことをしようとしてるんだろう。ふと、そんなことを思う。
馬鹿なんじゃないか。いや馬鹿なんだろう。……まぁでも、別にいいや。それで母さんが少しは俺に優しくしてくれるようになるなら。
何言ってるんだ。優しくなるわけないだろ。どうせまた暴力を振るわれるのが落ちだ。
そう心の片隅にいる冷静な自分が言う。
――やってみなきゃ、わかんねぇだろ。
母さんが少しでも俺に優しくしてくれる可能性があるなら、それにかけたいと思った。
なんで、そんなふうに思ってしまうんだろう。
なんで俺は、こんなに母さんを……。
……切ないな。いい加減、報われたい。
それか、自殺したいな。こんなに報われないなら、もういっそ自殺してしまいたい。
でも、その前に。
優しくされる可能性が低いのなんて、報われる可能性が低いのなんて、わかりきっていった。
それでも悪いことをするだけで母さんが俺に優しくしてくれる可能性があるなら、それに賭けてみたいと思った。
「怜央、ちょっと付き合ってくんない」
アイスを食べ終わったところで、俺は言う。
「え? ああ」
不思議そうな顔をして、怜央は頷く。
俺は椅子から立ち上がると、カウンターのそばにあったゴミ箱に、使い捨てのアイスのカップとスプーンを捨てた。
「騒いですみませんでした」
カウンターにいる店員に頭を下げる。
「いえ、とんでもないです。あの、……大丈夫ですか?」
「……大丈夫です」
店員に大丈夫じゃないなんていってもどうにもならないことはわかりきっているので、そう返事をした。
怜央が隣に来て、俺と同じように、アイスのカップとスプーンをゴミ箱に捨てる。
「……あづ、一体どこにいくんだよ?」
首を傾げて、怜央は言う。
「どこかは決まってない」
「じゃあ何をすんだ?」
「……たかり」
怜央にしか聞こえないように、小声でいう。
本当は、たかりなんてしたくなかった。
でもそうでもしなきゃ、母さんは俺に優しくしてくれそうもないし、もうどうしようもない。