死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
病室を出た瞬間、俺は驚愕した。
病室のドアの真横に、奈々と潤と恵美がいた。
え、こいつら、どこまで聞いて……?
まさか、全部聞いてないよな?
ああもう最悪だ。虐待がバレる。このタイミングでバレたら、絶対に自殺を止められるに違いない!
奈々が赤くなっている目で俺を見つめて、不安そうに俺に声をかける。
「……あづ」
「なんで、ここにいんの」
昨日は怜央としか遊んでないし、俺が母さんのとこに行ったのが奈々達にバレる理由なんてないのに。……まさか俺が奈々と喧嘩をして潤の家を出てから、ずっと探してくれていたんだろうか。それでたまたま病院にたどり着いて、俺を見かけたのか?
はあ。
心の中でため息を吐く。タイミング、最悪だな。なんで今。奈々達がそばにいたら、俺は自殺できないのに。
「ずっとあづのこと探してた。ラインのメッセに既読もつかなければ、電話も出てくれなかったから」
メッセと電話?
ポケットからスマホを取り出して、着信履歴を見る。奈々と潤から、合計五件ほどの着信が来ていた。
電話のアプリを閉じてラインを起動したら、ラインにも四件ほどの連絡が、奈々達から来ていた。
「ごめん。スマホ、見てなかった」
電話に出たりラインに返信したりできるほど、心に余裕がなかった。
「こっちこそごめん。まさか、病院であんな話聞くなんて思ってなくて」
潤が慌てて頭を下げる。
まあ、まさか病院で虐待の現場を見る羽目になるなんて、誰も思わないよな。
「……どこまで聞いた?」
「悪い。全部聞いた」
奈々が言う。
よりによって全部か……。
それならもう本当に、虐待のことは隠しようがないな。