死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「……ケーキとか食べたい。ずっと、食べてなかったから」
「ずっと、食べてなかった?」
潤が確認する。
「俺、虐待されてからずっと、母さんに誕生日祝われなくて」
「あづ、もういい。スーパー出るぞ」
「え?」
「誕生日ケーキ買いに行こう。それも、ただのケーキじゃなくて、二段とか三段のでかいホールケーキ」
「え、潤、何言って……そんなことしなくていい」
「しなきゃダメだ!! 今そうしないと、俺は絶対に後悔する!」
潤がカゴを持っていない方の手で、ぎゅっと、俺の腕を掴んだ。離さないとでも言うかのように、腕にグッと力が込められている。
「潤……」
「あづ、親に誕生日を祝われないことを、当たり前だなんて思うなよ。そんなふうに思ったら、絶対にダメだからな」
カゴを元の場所に戻して、潤は俺の頬を触る。
「……ごめん。俺、そういうこと全然わかんなくて」
親に誕生日を祝われないのは、当たり前のことじゃない。きっと世間から見たら、俺の認識は逆で。親に誕生日を祝われるのは、当たり前のことなんだ。
「謝んなくていい。今は、わからなくていい。俺と奈々と恵美が、あづがわかんないこと、一つ一つちゃんと教えるから。俺達が、あづの親代わりになるから」
俺の本当の親は、母さんだけだ。でも、母さんは俺に暴力を振るってばかりだから、確かに奈々と潤と恵美に、親代わりをしてもらった方がいいのかもしれない。
「うん、ありがとう」
潤はそうっと、優しく俺の頭を撫でた。