死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
ケーキ屋はスーパーから歩いて十五分くらいのところにあった。
店名はメランミル。可愛い名前だ。お店の壁は淡いピンク色で、ドアは自動ドアだった。
「いらっしゃいませー」
中に入ると、可愛い女の店員が俺達を出迎えてくれた。リボンやフリルがたくさん着いたロリータのような服を着ている。頭には、メイドさんがよくつけているカチューシャのようなものが着いていた。
「男性のお客様が来るの珍しいので嬉しいです!! どんなケーキをお探しですか?」
嬉しそうに口角を上げて、店員は笑った。
「二段くらいの大きな誕生日ケーキってありますか?」
潤が女の子を見て言う。
「潤、やっぱり……」
俺は金がないから、買うなら潤が払うことになる。それに二段じゃ値段も高いだろうからから申し訳ない気がした。それなのに、いざ断ろうとしたら声が出なかった。
「もちろんあります。あちらのケーキはいかがですか」
店員が俺達の前にあるショーウィンドウを指さす。
ショーウィンドウには、二段のショートケーキが置かれていた。
ケーキにはいちごや生クリームの他に、白薔薇や雪の結晶がトッピングされていた。
白薔薇は五センチくらいのが三つくらいあって、結晶は銀色の食べられないやつと、白くて食べられそうなやつがあった。
ショートケーキの隣には、タルトが置かれていた。タルト生地の上には、マカロンが十個以上並べられていて、その上にバレーのシューズのような形をしたスイーツがトッピングされている。多分、シューズはチョコレートか砂糖菓子で作られているのだと思う。
「……すご」
料理があまりできない俺でも、ケーキもタルトもすごい手がこんでいるのがわかった。
「ふふ、嬉しいです。ありがとうございます」
店員が笑った。
タルトの横には、黄色のドレスを着たお姫様の形のケーキや、大きなマカロンでできたケーキが置いてあった。
マカロンは、クマの小さなクッキーと生クリームが挟んであった。