死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

 ケーキ屋はスーパーから歩いて十五分くらいのところにあった。

 店名はメランミル。可愛い名前だ。お店の壁は淡いピンク色で、ドアは自動ドアだった。

「いらっしゃいませー」

 中に入ると、可愛い女の店員が俺達を出迎えてくれた。リボンやフリルがたくさん着いたロリータのような服を着ている。頭には、メイドさんがよくつけているカチューシャのようなものが着いていた。

「男性のお客様が来るの珍しいので嬉しいです!! どんなケーキをお探しですか?」

 嬉しそうに口角を上げて、店員は笑った。

「二段くらいの大きな誕生日ケーキってありますか?」

 潤が女の子を見て言う。

「潤、やっぱり……」

 俺は金がないから、買うなら潤が払うことになる。それに二段じゃ値段も高いだろうからから申し訳ない気がした。それなのに、いざ断ろうとしたら声が出なかった。

「もちろんあります。あちらのケーキはいかがですか」

 店員が俺達の前にあるショーウィンドウを指さす。

 ショーウィンドウには、二段のショートケーキが置かれていた。

 ケーキにはいちごや生クリームの他に、白薔薇や雪の結晶がトッピングされていた。

 白薔薇は五センチくらいのが三つくらいあって、結晶は銀色の食べられないやつと、白くて食べられそうなやつがあった。

 ショートケーキの隣には、タルトが置かれていた。タルト生地の上には、マカロンが十個以上並べられていて、その上にバレーのシューズのような形をしたスイーツがトッピングされている。多分、シューズはチョコレートか砂糖菓子で作られているのだと思う。

「……すご」

 料理があまりできない俺でも、ケーキもタルトもすごい手がこんでいるのがわかった。

「ふふ、嬉しいです。ありがとうございます」

 店員が笑った。

 タルトの横には、黄色のドレスを着たお姫様の形のケーキや、大きなマカロンでできたケーキが置いてあった。

 マカロンは、クマの小さなクッキーと生クリームが挟んであった。


< 165 / 170 >

この作品をシェア

pagetop