死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
一章
✕✕たい。
新学期になったばかりの春。
「アハハ!! 死ーね、死ーね!」
耳元でささやかれたその声が、俺の胸をぎゅっと締め付けた。
「なぁ、奈々絵、お前これ履けよ。こいつより似合うんじゃねぇの?」
スカートを俺の前に投げ捨て、草加は言う。
「返しなさいよ!!」
体操着のズボンを履いている佐藤が涙目でそう言ってるのを見て、少し申し訳ない気持ちになった。
ここは公立の小学校の四階の隅にある教室だ。窓にはカーテンがかかっている。故に佐藤を助けれるのなんて、せいぜい廊下にいる人間しかいない。もちろん、俺を助けられるのもだ。
それに、今は十分休みで廊下に出てる奴も少ないから、俺と佐藤は誰にも助けてもらえない。
「おい、奈々絵」
赤羽奈々絵なんて名前、大抵の奴が女だと思う。俺はこの名前も自分の容姿も嫌いだ。
女みたいに長い、七ミリくらいあるまつげ。細い小五の平均体重より十キロは軽い身体。百四十くらいの身長。本当になんでこんな気持ち悪い身体で生まれたのか。神様は最低だ。
俺は元々人付き合いが得意な方ではなくて、クラスに一週間たっても馴染めなかった。それが気にくわなかった草加達に目をつけられ、毎日いじめられている。もういじめられてから一週間は過ぎた。
「無視してんじゃねえよ、履けよ。でないと、口にスカート突っ込むぞ」
床に投げ出されているスカートを掴んで、草加は言う。