死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「なってねぇ。帰れ」
「帰らねぇよ? あと、そのやり方は汚ねぇ」
「はいはい。重いからどけろ」
 そう言い、俺はあづの腕を摑んでどかした。
「えっ、……確かに、大分丸くなってるな。 会ったばっかの時なら今絶対振りほどいてたし、隣にいんのも嫌がってただろうからな」
 うんうんと頷きながら潤は言う。
「だろー?」
 潤の方を向いて、あづは口角を上げて上機嫌に言う。
「俺、明日も来ようかな。あづがいくなら。こいつと仲良くなる気はねぇけど!」
「いや仲良くなれよそこは!」
 声を上げてあづは突っ込む。
「だって、あづこいつといたら俺の扱い雑になるだろ」
「なんねぇよ⁉」
「……お前らウザイくらい仲良いな」
「まぁな!お前も一緒に3人で仲良くしようぜ!」
 親指を上に上げ、残りの指を曲げてあづはいう。グッドのサインだ。
「「しねぇ」」
「だからなんで潤まで乗り気じゃないんだよ!」
「だってこいつ常識ねぇし」
「……そんなこと言ったら俺もないだろ? 髪染めてるし、学校休みがちだし」
「……お前は特別」
 あづの頭を撫でて、潤は言う。
「じゃああいつも特別にしろよ! 不平等な潤は嫌いだ!」
 頬をふくらませて、あづは潤から顔を背ける。
「わ、わかった!ごめん、ごめんあづ」
 慌てて手を合わせて、申し訳なさそうに潤は言う。
「よし!じゃあ明日も二人で来るからな!なえ!」
 そういうあづと、肩を落としながらも笑う潤を見て、胸が熱くなった。ムカついた。同時に、ほんの少しだけ羨ましいと思った。こいつらは本当にお互いのことを信じあってるんだとわかって。俺もそういう友達が欲しかった。こいつらといたら、きっと人生が楽しくなるんだろうななんて、そんなことを思う。俺は人生を楽しんだらいけないのに。
「……わかったよ。もう好きにしろ」
 そう思うのに、気がつけばそう口走っていた。 
 ……好きにさせちゃダメだろ。死ぬんだから。
 来るなって言えよ……。
 言えるわけがなかった。
 やっとできた友達にそんなこと言えるハズもない。

 ……友達?

 否定したくせにそんなふうに思ってたのか……。
 先生に友達じゃないって言ったのも、さっき否定したのも認めたくなかったからだ。友達だと思ってるのを認めたくなかった。だって認めたら、大切に思ってると自覚したら、別れが辛くなってしまうから。
< 26 / 170 >

この作品をシェア

pagetop