死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

「なんでだよ。理由聞かなきゃ帰らねぇ。そんなに帰りたいなら、お前らだけ先帰ってろよ」
 あづは二人を睨み付ける。
「でも、このままじゃ拉致が明かねぇぞ」
「それでも俺はこいつと話がしたいんだよ‼」
 俺を指さして、あづは叫ぶ。
「俺は話すことなんてねぇ」
「あるだろ。なんで出てけって言ったんだよ。それくらい教えろ」
「元からお前らに心なんて開いてないからだよ。もう演技すんのも馬鹿らしくなった」
 あづは目を見開く。
「本気で言ってんのか……?」
「ああ。そうに決まってんだろ」
「嘘。だってあんた、泣きそうな顔してるじゃない」
「俺が泣いたとこなんて見たことねぇくせによく言えるな」
「言えるわよ。だって今、あんた泣いてるもん」
 恵美が俺の頬に触れる。触れた指先が、俺の涙で濡れていた。
「……ふざけんな。何も知らねぇくせに、大した覚悟もねぇくせに世話焼こうとすんじゃねぇよ‼」
 声が枯れる勢いで叫ぶ。
 口だけの奴が一番(たち)が悪い。
 どうせ俺が人殺しなのを知ったら捨てるに決まっているのに。
 捨てられるのは怖い。でも俺はそれ以上に、助けると言って助けてくれない人間が気にくわないんだ。
 裏切られるくらいなら、自分から裏切れ。どうせ捨てられるなら、自分から捨ててしまえ。そう決めたなら、それをとことん貫け。どうせ手に入らないとわかっているくせに、掴もうとするな。
 ――俺はそれがお似合いだ。どうせ死ぬなら友達なんて欲しがるな。奴らの顔を見ればわかるだろう。人殺しと一緒にいる覚悟なんてないと。
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