死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「そんなに知りたいなら教えてやろうか? ――俺は、人殺しなんだよ。犯罪者なんだよ」
 三人は目を剥く。
「どういう意味だそれ」
 俺を見て、震えた声であづは言う。
「そのままの意味だ。俺が実の姉を殺したんだよ。帰れっていったのは、同年代の女を見ると殺した姉を思い出すからだよ」
「殺した……?」
 首を傾げてあづはいう。
「ああ、そうだよ」
 八重歯を出して俺は頷いた。 
 嫌われたくないと思うけど、それ以上に怖いんだ。誰かを信じるのも何もかも話すのも。
「赤羽くん、検査の時間だよ」
 病室のドアをノックして穂稀先生が言う。俺は何も言わず立ち上がった。
「奈々絵!」
 声を枯らす勢いであづは叫ぶ。
「あんたがそう呼ぶんじゃねぇ」
 先生に腕を引かれ、俺は三人から逃げるよう病室を出た。
「赤羽くん、さっきの態度は流石に良くないと思うよ?」
「いいんです。わざとですから。これ以上一緒にいたら、取り繕えなくなります。何もかも話したくなってしまいます。だからこれでいいんです。死ぬ人間に友達を作る資格なんてないんですから」
 俺はその日、生まれて初めてできた友達を捨てた。
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