死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「はっくしゅん!」
突然、あづが大きなくしゃみをする。
「ああもう。ほら。これ着てろ。病室行くぞ。ヒーターあるから」
ジャンバーのポケットからティッシュを取り出し、鼻をかませてから、ジャンバーを渡した。
「今日はやけに優しいじゃん」
ジャンバーを着ながら、あづは嬉しそうに笑う。
「お前が弱ってるからだよ。とにかく行くぞ」
顔をしかめ、俺はあづの腕を引いて歩き出した。
「あったか……」
病室に戻ると、あづはベッドに座ってヒーターの近くに手を近づけた。仕方がないので、俺は隣に座って話しかけた。
「お前さ、まじ勘弁しろよ。何来てんだよ」
「だって、このまま会えなかったら嫌だったし、それに、お前のいったことが気にかかったから」
「あー」
思わず声が漏れる。
人殺しなんて言われたら気になるのが普通なのか……。冷静に考えたらそうなのかもしれない。そこまで考えてなかった。
本当に大切に思ってたらちゃんと気にかけてくれるものなのに、それを全然念頭においていなかった。いや、想定できなかったんだ。気にかけてくれるなんて。いつだってのけ者にされたり、酷い扱いを受けたりするのが当たり前だったから。
一週間も俺のことを考えてくれていたのかと思うと、思わず目頭が熱くなった。
マズい。泣きそうだ。人殺しに友達を作る資格なんてないのに。
本当に俺は困った奴だ。
捨てるって決めた癖に結局捨てられなくて、邪険に扱う癖に、本当は構って欲しいなんて。本当に俺はめんどくさい。
それなのに、なんでこいつは俺を捨てようとしないんだ。手放せなくなるだろ。もうすぐ海外に行くつもりだったのに、いけなくなるだろ。