死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「なえ?」
あづが首を傾げ、不安そうな顔をして俺を見る。
「ごめん。……悪かったよ」
小さな声で言う。
確信した。俺はこいつを捨てられない。きっとこの先何があっても、俺はこいつを捨てられない。嫌えない。俺にはもったいないくらい真っ直ぐで、優しい理想の友達のこいつを、捨てられるわけがない。
「えっ、謝ってくれんの? じゃあお詫びに遊べよ。俺となえと潤と恵美の四人で遊ぼうぜ」
さっきの不安げな態度はどこにいったのか、あづは急に元気よく提案してきた。
「嫌に決まってんだろ。なんで恵美もなんだよ。三人でも遊ばねぇけど」
「なんでだよ。いいじゃん一日だけでいいからさ! な?」
俺に抱きついてあづは言う。
「だから嫌だって。離れろ」
「いいじゃん! なーえー!」
「しつこい」
「いいよ。遊んでくれるなら人殺しのことは聞かねぇ。それならいいだろ。潤たちにも聞かないよう言っとくからさ」
人殺しのことは聞かないか……。確かにそれならいいかもしれない。
「一回だけだからな」
眉間に皺をよせ、俺は言う。
「ああ!」
強く俺を抱きしめ、嬉しそうにあづは笑う。
「いい加減放せ! お前冷たいんだよ!」
あづの手を身体からどかし、憎まれ口を叩く。
「誰のせいだと思ってんだよ」
「……だからそれは、ごめんって」
顔を伏せていう。
「冗談だよ。バーカ」
そう言って、あづは俺にデコピンをした。
直後、あづはまたくしゃみをした。
「汚ねぇ」
ぼやきながら、あづの鼻にティッシュを押し当てる。
「なんか今日のなえは兄みたいだな!」
上機嫌に笑って、あづは言う。
「……お前が子供っぽすぎるだけだろ」
呆れたように言い、俺はほんの少しだけ笑った。