死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
俺はこいつに、どんどん魅かれている。そんなの許されないことなのに。
今ここで捨てた方が、きっと後悔しない。そう思うのに、俺はこいつを捨てられない。
「本当に、物好きな奴だな」
ドライヤーをコンセントにさし、あづの髪を乾かしながら呟く。
「なえなんかいったか?」
「なんでもねぇよ」
すまし顔で言う。
俺にこんなに構ってくる奴なんてお前だけだよ。俺が魅かれるのはそのせいだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁ! あづ!」
息を切らして、潤が病室に入ってくる。
「潤じゃん! どうした?」
潤の声が聞こえないと思い、俺は慌ててドライヤーを止めた。
「どうしたじゃねぇよ! LINEも返信こねぇし電話もでねぇからまさかと思ったが……本当にお前は馬鹿か! 風邪引くぞ!」
潤が言ったのは、さっき俺が言ったのと同じような内容だった。
「それ、さっきなえにも言われた」
「……なえ。悪い。あづが手間かけた。服も貸してくれたんだな、ありがとう。正直、ちょっと見直したわ」
俺の頭を撫でて、潤は言う。
たとえ親友の世話をしてくれたからだとしても、撫でられたのが嬉しくて胸が熱くなった。同年代くらいの奴らに撫でられたのなんて初めてだ。
「別に。あんな姿見たら誰だって心配するだろ」
顔が赤いのを隠すように顔を背け、素っ気なく応じる。
「そうかもしんねぇけど、言わせて。見ての通りこいつすぐ突拍子もないことやらかすからさ。本当に助かった。ありがとう」
「お前人をガキみたいに……」
「ガキだろ! たっく! お前は本当に無茶しかしねぇんだから!」
そういい、潤はあづにデコピンをする。
「痛っ⁉」
……楽しそうだな。そう思った俺は、少しだけ笑った。
「……なえ」
潤が俺を見る。
「なえ、笑った?」
額をおさえながら、あづは嬉しそうに目を輝かせる。
「そっ、そんなこと……」
慌てて俺は口をおさえる。
「なえってよく顔背けたり隠したりするよな。綺麗な顔してんのに」
口を抑えている手を掴んで、あづは言う。顔から手をどかされ、ベッドの上に置かれた。
「はっ⁉ 気持ち悪いだろこんな女子みたいな顔!」
思いっきり叫び返す。
「……いや、綺麗だろ。漫画でも美少年とかいるし」
あづに賛同するように潤も言う。