死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

「だってなえ暇そうだし? あと携帯ねぇのって不便じゃん。面会時間外に話すこともできねぇし、何時に検査があるかもわかんねぇんだから」
 何でもない様子であづは言う。
「お前ら、頭可笑しいんじゃないか?」
「……それは誉め言葉か?」
 そう言い、あづは呆れたように笑う。
「……本当に頭可笑しすぎだろ」
 涙が零れた。拭っても拭っても溢れ出す。それはまるで、滝のように。
「え、なえが泣いた! うっそだろ!」
「……うるっさいあづ!」
 泣きながら叫ぶ。
 本当に嫌になるくらいあったかい。なんでこんなにあったかいんだよ。俺は最愛の姉を殺したのに。
 本当にこいつらは、俺にはもったいないくらいいい奴だ。
「奈々」
 涙を拭いながら呟く。
「「へ?」」とあづと潤は聞き返す。
「何?」
 恵美も、そういって首を傾げた。
「……奈々って呼べよ。なえとは、もう呼ばなくていい」
「「おう!」」
「うん!」
 三人は元気よく笑って頷いた。
 俺には何もない訳じゃないのが良く分かったから。少なくとも、こいつらはそう思ってないのがわかったから。もう、自分に何もないと思うのは、やめてやるよ。
 親戚のためにも俺はきっと死んだ方がいいとは思うけど、お前らがそう思ってないことだけは、頭の片隅に置いといてやるよ……。
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