死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

「「なな、あづ!」」
 潤があづの肩を、恵美が俺の肩を叩いてくる。何かと思って後ろに振り向くと、口に何かを詰め込まれた。
 噛むとザクザク砕ける。ココア味のクッキーだ。
「これペンギンじゃん!」
 潤から渡されたクッキーを見つめ、あづははしゃぐ。クッキーがペンギンの形をしているようだ。
「ペンギンだけじゃないんだよ?」
 クッキーが入った紙袋を握った恵美が、楽しそうに言う。紙袋を覗くと、ペンギンの他に魚やあざらしの形をしたのがあった。ココア味とバニラ味があるようだ。
「なんだこれ! おもしろ!」
 紙袋から何個もクッキーを取ってあづは笑う。
「……水族館限定のクッキーなんだな」
 クッキーを飲み込んでから俺は言う。
「うん! こういうのは食べるべきだよね!」
 あざらし型のバニラ味のクッキーを取り、恵美は笑う。
「……そうだな」
「フフ。奈々、ちょっと雰囲気が柔らかくなったね?」
「……そんなことない」
「あるよ! 今日来てよかった。明日から、私も病院いくね?」
 ウィンクをし、恵美は言う。
「……勝手に来れば」
「うん、そうする!」
 俺は恵美から目を逸らす。やっぱり恵美を見てると、姉を思い出す。なんとか会話はできるけど。

 俺は多分一生姉を忘れられないし、自分が恨まれているのも忘れられないのだろう。
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