死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「……何企んでいるんですか。まさか、俺を殺しに来たんですか?」
青ざめた顔をして、俺は爽月さんを訝しむ。
「はぁー。わざわざフランスまでお前を殺しに行く馬鹿が何処にいんだよ」
ため息を吐き、肩を落として爽月さんはいう。
「……しそうですもん、爽月さんなら」
「……まぁ、紫苑が死んだばっかの時の俺ならな。俺、もうお前のこと恨んでないよ。今日は謝りに来たんだ。本当に、申し訳なかった」
「えっ」
「本当にすまなかった。……謝って許されることじゃないと思ってる。それでも、言わなきゃダメだと思ったんだ」
爽月さんは深く頭を下げる。
「……頭、打ちました?」
爽月さんは眉間に皺を寄せる。
「お前な、この俺がわざわざ家にあったお前の書類見て病院調べてフランスまで来てやったっていうのに、つまんねぇ冗談いってんじゃねぇよ」
俺にデコピンをして、爽月さんは笑う。
「わっ」
「病院行ったらいねぇし、本当にここくるまで大変だったんだからな?」
笑いながら、爽月さんは憎まれ口を叩く。
「……すいません」
「ま、ここ病院の屋上だからすぐ会えたし? それに、来たのは俺が行かなきゃダメだと思ったからだし、別にいいけどな」
「……何で謝りに来てくれたんですか」
「もう紫苑が死んでから二年半だろ。最近、アイツが死んだのやっと受け入れられるようになってさ、それで思ったんだよ。お前に酷いことしたなって。俺あの時本当に余裕なくてさ、お前に当たるしかなかったんだよ。悪いのはあいつらを引いたクソ野郎なのに、本当にすまなかった」
「……遅すぎますよ。あんたのせいで、俺がどんだけ苦しんだと思ってるんですか」
俺が死のうとした原因はこの人だと言っても過言ではない。もちろんいじめもあるけれど、爽月さんにお前が死ねばよかったんだって言われてなければ、俺は自殺していない。
「ああ、わかってるよ。だから許せなんて言わないし、許してくれるとも思ってない。これは自己満みたいなもんなんだと思う。でも、どうしても言いたかったから。本当にごめんな」
爽月さんが俺の頭を撫でる。
「俺、爽月さんのこと許しませんよ」
「許さなくていい。俺が言いたかっただけだからな」
そういって、爽月さんは笑った。