死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「……なんで、ここまで来てくれたんですか。俺が日本に帰ってからでもよかったじゃないですか」
凄い自分勝手で、虫がよすぎると思った。でも、フランスまで来てくれたのに、興味が湧いた。なんでそこまでしたのか、気になった。
「俺、もう大学生だからな。留学したいとでも言えば、海外は簡単に行けるんだよ。日本だと、紫苑に線香あげに行くだけだとしても、お前に会っても話すんじゃねぇって親に釘刺されるからな。病院にいくのなんて無理だ。それに、もう一つ用事もあったからな」
そういい、爽月さんは肩に掛けていたショルダーバッグから、見覚えのある白いラッピングされた箱を取り出す。
――まさか。
「お前の親友だと名乗る奴から預かってきた。高校生のくせに髪が青くて、吊り目の」
間違いなく、あづのことだった。
震える手で箱を受け取り、中身を取り出す。
中には、やはり、あの日捨てたハズのスマホが入っていた。
「……病院いたらすることないだろうし、やるって。あと伝言。まだ待ってるって」
それは、あまりに優しすぎる嘘の言葉と、伝言だった。
きっとあづは、穂稀先生がゴミ箱から拾って家に持って帰った俺のスマホを見つけて、すごく葛藤したのだろう。俺に返すか、返さないか。三年も悩んで、渡すのを決めたんだ。
それだけで、十分だった。
それがわかっただけで、長考してるのが馬鹿らしくなった。何難しく考えているんだ。そんな必要、なかったのに。
――帰ろう。帰らないと、ダメだ。
こんな健気に待ってくれているのに、帰らないなんてダメだ。
四か月でどうにかするのなんて、無謀なのだろう。それでも、やるだけやってみよう。うまくいくか分からないけれど。
「爽月さん、相談乗ってもらえませんか」
俺はそれから、爽月さんにあづのことを話した。