死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
六章
最高の生き方。
爽月さんにあづのことを話し終える頃には、すっかりお昼になっていた。
爽月さんは相槌を打ちながら話を聞いてくれた。真面目に聞いてくれると思ってなかったから、少し驚いた。
俺はこの人の謝罪が本気なのかそうでないのかわからない。自分を殺そうとした人間を信じるなんて無理な話だ。それでも、真面目に聞いてくれるなら、ちゃんと相談してみようと思った。
謝罪が嘘かどうかは、二の次だ。フランスまで来てくれたんだし、本心で言ったんだと思いたいけれど。
「虐待ねぇ……。本当に、この世にはろくな親がいないな」
そういい、爽月さんは飛び降り防止の柵に寄りかかって、煙草をふかした。
「奈々絵、これ、見ろよ」
爽月さんは服をめくり上げて、腹を俺に見せる。
「えっ」
腹に煙草をおしつけられたような跡が、ニ、三箇所あった。
「……飛行機乗る日、家出る前に忘れ物ないか調べてたら、フランス行きのチケットバックに入れてたはずなのになくてさ。……父親が庭でライターで燃やしてたんだよ。留学するっていったけど、どこかはいってなかったから、不審に思ったんだろうな。何してんだよっていったら殴られて、吸ってた煙草押し付けれた。それで俺はすぐに家出て、チケット買い直してここまで逃げて来たんだよ」
言葉を失った。
そんなの完全に虐待だ。しかも、俺が原因なんて、嫌すぎるだろ。
「……飛行機乗る前、お前に会いに行くかどうか凄い迷ったよ。でも、俺は親父やおふくろと同じように紫苑が死んだのをずっとお前のせいにしてんのは絶対嫌だと思った。だから来たんだ。……お前に受け入れられてなかったら、きっと死んでたよ俺」
何も言えなかった。
辛すぎて、聞いてるこっちが息をするのも忘れそうになるくらいだった。