死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「ふぅ。やっと着いたなー! 眠っ」
 あくびをしながら、爽月さんは飛行機から降りる。俺は何も言わず、飛行機から降りた。
 俺は退院の手続きを終え、飛行機で日本に三年ぶりに帰ってきた。もう帰ってくることなんてないと思っていたのに。

「俺、これから友達んとこに車預けてるから取り行ってそのまま車で奈々絵の家行くつもりだけど、お前どうする?」
「俺も、一緒に行きます」
「……あづのとこ行かなくていいのか?」
 怪訝そうな顔をして、爽月さんは首を傾げる。
「……だって、今どこにいるかわかんないですし」
「はぁー」
 爽月さんは大きなため息をついた後、俺のポケットからスマホを奪い取った。
「ちょっ!? 爽月さんなにするつもりですか!」
 スマホを返してほしくて、俺は右手を伸ばす。
「うるせぇ、ちょっと黙ってろ。あ? これロック紫苑の誕生日じゃねぇか。シスコンかよ」
 俺の手を器用にかわし、爽月さんはスマホを操作する。
「……早く返してください」
「ん、ほら」
 何げない雰囲気を装って、爽月さんはスマホを差し出す。
 スマホには、あづとの通話画面が表示されていた。

「爽月さん、何してるんですか!」
 通話をミュートに切り替えてから、爽月さんは俺に笑いかける。
「まぁ……俺はお前がいじめとか、俺や俺の親のせいで暗くなったの知ってるし、今更それを直せとも、俺らを信用しろともいわねぇけどさ、そいつのことは信じてやれよ。救うって決めたんだろ?」
「でっ、でも、そんなのありがた迷惑かもしれませんし」
 「アホか。虐待されて嬉しい人間なんかいるわけねぇだろ」
 俺の頭にチョップをして、 爽月さんは言う。
「でも、俺、救う前に死ぬかも」
「うるっせえな! 仮にそうなったら、後のことは他の奴に頼めばいいだろうが」
 俺の言葉を亘って投げやりにいい、爽月さんはミュートを解除してから、スマホを俺の顔に向かって投げる。
「うわっ」
 俺は思わず顔の前に右手をやり、スマホを受け取る。そんな俺を見て、爽月さんは〝それが答えだ〟とでもいわんばかりに、満足そうに笑った。
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