死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
《奈々絵? お前今どこにいんだよっ⁉》
耳をスマホにあてた瞬間、そう大声で言われた。
「……空港にいるけど」
《空港? ……海外いるってマジだったんだな。お前さ、どこ行くかくらい言ってからいなくなれよ! 俺日本中の病院に電話かけたんだからな?》
「探してたのか……?」
《ああ、そうだよ。待ってるとは言ったけど、お前三年も平気で待たせるし。そんなに長い間大人しく待てるわけねーだろ!》
「……ごめん」
何で捨てないんだよ。
待つのが嫌なら、捨てればいいのに。なんでその選択肢はないんだ。なんで日本中の病院に電話かけたりするんだ。なんでそんなに真っ直ぐなんだよ。
《ん。まぁ、別にいいけどさ。また話せたし》
「……爽月さんとは、いつ知り合ったんだ?」
《んー、一週間くらい前だな。どんだけ電話しても見つかんねぇから、母さんに奈々どこにいんのかダメ元で聞きに行こうと思って、前奈々が入院してた長谷川病院行ったら会った》
ん? 病院で会ったのか?
爽月さん、俺のこと知りたくてわざわざ病院まで行ったのか? そんなこと一言も言ってなかったけど。
何か不自然だな。あづが嘘を言ってるわけではないのだろうが、どうも辻褄が合わない。
《奈々? どうした?》
まぁ、そんなに深く気にすることでもないか。
「いや……何でもない」
首を振って俺はいった。
《そうか? ならいいけど。それにしても、奈々と爽月さんって似てるよな! 二人とも二重のとことか、背がそんなに高くないとことか、他にも色々! 見た目すげーそっくりだよな! 違うの雰囲気とか、髪型くらい》
楽しそうにハイテンションで笑って、あづは言う。
「……そうか?」
《ああ、似てる! それで俺気づいたし‼》
「……嬉しくねぇ」
《アハハ! ……で? 後ろめたくはなくなったのか?》
「……全然なってねぇよ。爽月さんはもう俺が姉殺したと思ってないみたいだけど、他の奴らはまだ思ってるだろうし、それ考えるとすげぇ嫌になるよ。……でも、お前の気持ちには答えてやりたいと思った。お前が俺が他人にどう思われてようと、俺と一緒にいたいって思ってくれてんのよく分かったから」
《わかんのくそおせぇよ。マジで俺じゃなかったらこんなに待ってねぇからな? 感謝しろよ》
呆れたように笑ってあづは言う。