死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「遅いんだよ、バカ奈々!」
車から出てきた俺に気づいて、あづは憎まれ口をたたく。
「まったくだわ。見た目変わりすぎてて、一瞬誰かと思ったわよ」
覚めた目をして、恵美は言う。
「本当だよな。マジ遅すぎ」
あきれたように笑って潤は言う。
「……悪かったよ。待たせて」
「まったくだ。じゃ、とっとと行くぞ」
俺の右腕をつかんで,あづは言う。
「どこにだよ」
「それは秘密だ!」
そういい、あづは俺の腕を引いて走り出した。
潤と恵美は、笑ってその後をついてくる。
連れてこられたのは、豪邸だった。
黄色の薔薇のアーチの入り口があり、その奥には、ペチュニアやダリア、マーガレットなどの色とりどりの花が咲き乱れている。まるで花畑のようだ。その右端に、白いテーブルと二つの椅子があって、椅子の真下でチワワが目を閉じて優雅に眠っている。
まるで漫画の世界だ。
花畑を抜けた先には、二階建てで、薔薇柄のステンドグラスの窓がある海外ドラマとかによく出てきそうな横に長い家がある。上を見上げると、二階には十畳はあるテラスがあって、ドアは両開きのステンドグラスで作られており、どこもかしこも明らかに金をかけているのが分かった。
「どう? 私のお母さんいい趣味してるでしょ」
自慢げに、恵美は言う。
「お前らの家なのか?」
目を見開いて俺は言う。
「「そういうこと!」」
すると潤と恵美は、声を揃え自慢げにそう言った。
「やっぱすごいな潤達の家は!」
声を上げていい、あづは走って花畑のところへ行く。あっちこっち走り回って、まるで犬みたいだ。こんなに満開の花なんて見たことないから、新鮮なんだろうな。
「また始まった」
目尻を下げ、恵美はため息をつく。
あづは花を一通り見てから、テーブルがあるとこに行って、チワワの頭を撫でた。
「アハハ! 見ろよ奈々。犬みたいな奴が、本物の犬あやしてるぜ?」
腹を抱えて笑い、潤は言う。
「潤……」