死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「あいつさ、あんな風にしてるけど、本当はお前がいなくなってから、半年は様子おかしかったんだぞ。もう毎日のように知らない奴と喧嘩しててさ。物に当たるみたいな感覚で、ストレス発散でやってたんだと思うけど。そのストレスがたまった原因、何かわかる? お前。お前がいなくなったから荒れたの」
不満げに潤は言う。
「潤、俺は」
「……いいよ。別に俺はお前が話したくないなら、聞かねえ。ただ俺が言いたいのは、何もかも一人で決めんなってこと。アイツも俺も恵美も、おまえがいなくなってさみしかったんだよ」
「なんで」
「あ?」
「なんでだよ。だってお前らが俺といたのたかが半年だろ。それなのに、なんで」
直後、背後から思いっきり水をかけられた。
思わず身震いしながら後ろに振り向くと、あづが蛇口についてるホースを握り締めて、涙を流していた。
「たかがじゃねぇ! 半年もだ! お前は俺らを捨てようとしたんだよ! 半年も一緒にいたのに‼」
「……あづ」
目を見開き、俺は言う。
「もういなくなんな」
俺を抱きしめて、あづは言う。
あづの顔が、涙で濡れていた。
きっとこの涙は、依存の涙だ。
あづは親がくれない温もりや寂しさを、俺や潤や恵美で埋めようとしている。
俺はもうすぐ死ぬって言うのに。
それでも俺は、こいつを手放せない。
「ああ、いなくならないよ。……ごめんな、あづ」
酷い嘘だ。
四か月で死ぬ人間が口にしていい言葉ではない。
それでも俺は、嘘を付き続けてでも、こいつを死ぬまで手放さないで生きていきたい。
それが俺の最初で最後のわがままだ。