死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
あづに水をぶっかけられた俺を、潤は慌てて家に入れてくれた。
潤達の家は中も豪華で、玄関の照明はシャンデリアになっており、廊下の床にはレッドカーペットが敷いてあった。
「「「おかえりなさいませ。潤さま、恵美様!」」」
玄関にいる俺達のところにメイドと執事が一人ずつ駆けつけてきて、挨拶してくる。
……使用人までいるのか。
もう驚きを通り越して呆れる事態だ。
通りで俺のスマフォが買えるわけだ。
「ねねっ、タオル持ってきてくれる? あんたは潤のタンスから服取ってきて!」
俺をあごでしめしてから、恵美はメイドにタオル、執事に着替えを持ってくるようお願いする。
「「申し訳ございません! 直ぐご用意します!」」
メイドと執事は声を揃えてそう言うと、駆け足でタオルと着替えを取りに行った。
三分もしないうちにメイドが戻ってきて、俺達は二人に案内され洗面所まで行った。
「はっくしょん!」
タオルで髪を吹いている俺は、寒くて思わずくしゃみをした。
「ごめん! イライラして思わず掛けちまったんだ。本当にごめん!」
くしゃみをした俺を見て、手を合わせ、申し訳なさそうに頭を下げてあづは言う。
「……はぁ。ごめんじゃねえよ。風邪引くつーの」
「はぁ。本当に何であづはいつもいつも突拍子のないことやらかすんだよ。やられる方の身にもなれっつーの」
俺に続いて、呆れながら潤はいう。
「だっ、だって奈々がたかが半年とかいうから」
「それは……」
ばつが悪くて、俺は顔を伏せた。
「まぁ確かにたかが半年ってのは俺もちょっと無神経だと思うけど、やっていいことと悪いことがあるよなぁ。これで奈々が風邪引いたらどうすんだよ」
あづの頭を軽くこづいて、不満気に潤は言う。
「はっくっしょん!」
俺はまたくしゃみをした。
「……既に引いてるんじゃない?」
俺の額に手を当てて、恵美は言う。
「ダメダメじゃねえか! 早く着替えろ奈々絵!」
洗濯機の上に置いてある着替えを指さして、潤は言う。