死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「フッ」
「奈々? 何笑ってんだよ?」
あづが不思議そうに俺の顔を覗きこむ。
「……いや、前もこんなことあったなぁって思ってさ」
「前? あー! あづが大雨の中病院行った時のことか! いや本当に、あの時はマジで心臓止まるかと思ったわ!」
声をあげて笑いながら、潤は言う。
「……俺もだよ。本当にびっくりした」
「え? 何々? 何の話?」
「恵美は聞かなくていいから! 奈々着替えるんだろ! ほら、とっとと出るぞ!」
あづはリンゴみたいに頬を赤くしてそういうと、恵美の腕を引いて洗面所を出ていった。
「あづ、照れたな」
歯を出して心の底から楽しそうに笑いながら、潤は言う。
「ククッ、そうだな」
笑いながら、俺は頷いた。
「それにしても、奈々が意外と元気で安心したわ。左腕、動いてねぇみたいだけど」
着替えている俺を見ながら、潤はとんでもないことを言う。
「えっ。……いつ、気づいた?」
着替え終わると、俺は慌てて後ろに振り向いて、低い声で言った。
「ついさっき。髪吹くのに、ずっと右腕だけ使ってたじゃん」
俺の髪をドライヤーで乾かしながら、潤は言う。
「あづは?」
「あいつはそういうの鈍いから、多分気づいてねぇよ。恵美は気づいてるかもしんねぇけど、お前が話そうとしなければ、あづには言わねぇと思う」
「……そうか」
俺は肩を落として、ため息を吐く。