死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「……はぁ。あづんとこ行くぞ」
涙を拭いながら、潤は言う。
「ああ。潤、あづ達には……」
「分かってる。話さねえよ。あづ、知ったらまた何かやらかしそうだしな。隠してやるよ、お前が望むなら。ただ、いつか全部話せ。ちゃんとお前の口からな。人づてで聞くのあいつ一番嫌いだからな」
「……ああ、わかってるよ。いつかちゃんと話す。でもその前に、アイツの問題を解決しないとだからな」
「……問題?」
「ああ。アイツ、虐待受けてる」
俺は潤に、あづが虐待を受けていることを話した。
「……そうか。何か変だとは思ってたんだよなぁ。あいつ、帰るの夜中とかになっても、全然母親に連絡しねぇし、俺が連絡しなくていいのかとか言ってもはぐらかすからな。それに、早く帰るのやたら嫌がるし」
「……そうか」
帰るの嫌がるのは、早く寝て朝早く起きると、母親に会うハメになるからだろうな。
そんなに嫌がるなんて、会ったら必ず暴力でも振るわれているのだろうか。
「……本当に虐待受けてるなら、確かにお前のことは全部終わってから話した方がいいな」
「ああ」
「……ちゃんと話せよ? じゃないと絶交だからな?」
俺の右肩を軽く叩いて、笑って潤は言う。
「……ああ、わかってるよ」
そう言って頷くと、俺は作り笑いをした。
――いつか必ず話す。
死ぬ前になるか、死んだ後になるかわからないけれど。言われなくても、いつかちゃんと話すよ。あづにも恵美にも。
「……ごめんな。隠してんのきついよな、こんな話」
「別にいいよ。それでお前が残りの四か月過ごしやすいなら」
「潤……。もう怒ってないのか?」
首を傾げて、俺は尋ねる。
「あ? 怒ってねえよ元から」
「えっ、でもさっき、もういいって」
「それは怒ってたんじゃなくて、全然自分のこと話さないお前に失望したんだよ」
そういい、潤は俺にデコピンをする。
「……ごめん」
額を押さえながら、俺は顔を伏せる。
「……いいよ別に。前は本当に自分のこと話してくれなかったからな。話すようになってくれただけまだマシだし。つか、何度も謝んな。こういう時はありがとうだろ」
俺の頭を撫でて、潤は不満げにぼやく。
「ありがとう?」
「ああ。余命のこと内緒にしてくれてありがとう、だろ?」
「……そうだな。ありがとう、潤」
「おう!」
俺がそう言うと、潤は歯を出して、満足そうに笑った。