死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

 俺は門の中に入った。
 壁がところどころひび割れている。窓も割れているところがあって、工場の周りには、たくさんの瓦礫が散らばっていた。
 廃工場なのだろうか。
「弱かったな」
「ああ。本当に弱かった」
 同年代くらいの奴が、廃ビルに身体をよっかからせて、地べたにあぐらをかいていた。青い髪を肩まで伸ばした男と、茶パツの外ハネした髪の男だ。彼らの服は、ところどころ血がついている。喧嘩でもしたのだろうか。
 ……人いるし、場所変えるか?
 でも、また探すのもめんどくさいな。 
 ……知り合いじゃないんだし、別にいいか。
 俺は工場の中に入り、階段を上がって屋上に向かった。中はほこりくさく、そこら中にゴミが舞っている。
屋上のドアを開ける。
 飛び降り防止の柵を飛び越え、遥か真下にある地面を見た。瓦礫だらけで足場が悪い。平らなところなんてほとんどない。三階建てだとちゃんと死ねるのか不安だったが、これならたぶん問題ないだろう。
 ……早く死のう。俺なんていらないんだから。
 俺は屋上から飛び降りた。

「んっ」
 窓から射す陽の光に目がくらんだ。
 ここはどこだ……?
 俺はちゃんと死ねたのだろうか。
 目を開けて辺りを見回す。
 俺は白いベッドの上に病衣を着て寝っ転がっていた。腕には点滴がされている。足は動かない。ちょっと動かそうとするだけで、猛烈な痛みに襲われる。どうやら、両足を複雑骨折しているようだ。
 痛みがあるなら、ここは天国じゃない。
 ……病院か?
 俺は死ねなかったのか?
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