死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「爽月さん、爽月さん」
「ん?」
俺が声をかけると、ベッドの上にいた爽月さんは目をこすりながら、ゆっくりと開けた。
「すみません、寝ようとしたばっかの時に申し訳ないんですけど、起きてくれますか? あづが家来たので、布団用意しなくちゃいけなくて。手伝ってくれますか?」
「わかった。手伝う」
髪をいじりながら、眠そうに欠伸をして爽月さんはいう。
俺達は二人で、姉の部屋にある布団をとりにいった。
「……なんでこんな夜中に?」
敷布団を掴んで、爽月さんは首を傾げる。
「小遣いつきて、飯買えなかったらしいです」
「母親は?」
「……作ってくれたことがないみたいです」
右手で掛け布団を掴んで、俺は言う。
あづは中学の時から母親がくれる小遣いで飯を買ってるって言ってたから、飯を作ってもらう機会が少ないのはわかるけど、まさか作ってもらったことがないなんて本当に予想外だ。
医者でも休日くらいあるはずなのに食事の一つも作ってもらえないなんて辛すぎるだろ。
「は? マジで?」
目を見開いて、爽月さんは尋ねる。
「いうつもりじゃなかったみたいで、なんでもないってすぐに言ってましたけど、本当かと思います」
「マジか……。それで? お前はどうすんの?」
「……ぶち壊します、そんな日々」
「よろしい」
そういい、俺の頭を撫でて爽月さんは陽気に笑った。