死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

 俺は爽月さんと一緒に姉の布団を自分の部屋に持っていくと、あづの着替えを用意するために、タンスを開けた。

「あづと奈々絵って服のサイズ同じなのか?」
 姉の布団の上に座り込んでいる爽月さんが、首を傾げて聞いてくる。

「……同じですね。アイツ細いんで」
 俺はあづのための下着とジャージをタンスから出しながらいう。
「奈々絵よりは太ってるよな?」
「はい。さすがに俺よりは太ってると思います。でもたぶん、二、三キロしか変わんないですよ」
「……ふーん。確かに会った時からちょっと細い感じはしてたけど、そんなになんだな。病弱のお前と体重がそんなに変わらないって、だいぶやばくないか?」
 爽月さんが眉間に皺を寄せて言う。
「……そうなんですよね。俺、アイツを太らせたいです。アイツがどこまで乗り気になってくれるか、わかんないですけど」
「案外乗り気になるんじゃね? 虐待されてたなら、クレープとかパフェとかピザとかケーキとかそういうのあんま食べたことないだろうし、食いに行こうって誘ったら、のってくれんじゃね?」
「……そうかもしれませんね。誘ってみます」
「おう!」

「ななー! 服貸して! あと、バスタオル欲しい!」
 お風呂場の方から、あづの声が聞こえてきた。
 俺は慌てて着替えを持って部屋を出て、バスタオルを用意してから、風呂場に隣接してる洗面所に行った。
 洗面所は入り口のドアを開けてすぐのところに流しがあって、その隣に洗濯機があって、洗面所の真下にドライヤーやヘアアイロンが入ったカゴと、石鹸やシャンプーや、洗濯洗剤などが入ったカゴが横並びで置かれている。
「あづ、着替えとバスタオル持ってきたぞ」
 俺は洗濯機のそばのドアを開けたとこにある風呂場の方に身体を向けていった。
「ん、ありがと」
 あづは礼をいったが、ドアを開けてバスタオルを受け取ろうとはしなかった。
 虐待の傷を見られたくないから、そうしたんだろうな。
「洗濯機の上置いておくな」
「ああ」
 俺は洗濯機の上に着替えとバスタオルを置いてから、洗面所を後にした。
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