死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

「それから、どうやって仲良くなったんだ?」
 俺は頬が赤くなりそうだったから、急いで質問をして、あづの意識が俺の顔に集中しないようにした。

「ある日、トラブルが起こったんだよ。友達の万引きが店員にバレて、俺も一緒に万引きしてるんじゃないかって疑われたの。それで俺はしてなかったからもちろん否定したんだけど、『そんな派手な身なりをしている奴のことなんて信じられるわけないだろ!』って言われてさ。俺それですげぇムカついて、店員のこと殴ろうとしたんだよ。そしたら店員じゃなくて、潤が俺に殴られてた。潤が店員を庇ったんだよ」
「……もしかして、潤はあづを尾行してたのか?」
「そう。後から知ったんだけど、その日だけじゃなくて、初めて中学校まで来て一緒に帰ろうって言った日からずっと尾行をしてたらしい。あいつはずっと帰るフリをしてたんだ」
「はぁ……。庇ったのは、店員を殴ったら学校に連絡がいくと思ったからか?」
 現実味のない話を聞いたからか、思わず気の抜けた声を出してしまった。
 仲が良かったとはいえ、小学一年生の時しか付き合いがない奴を尾行までしたのか? 世話の焼き方が尋常じゃないな。
「……うん、そう言ってた。それにあいつ、『こいつは万引きをしてない。俺はずっと近くにいたからわかる。こいつは絶対にしてない!』とか店員にいって、万引きの疑いも晴らしたんだよ! 本当に変だよな」
 あづはまるで可笑しくてたまらないかのような態度でそういった。
「そうだな」
「まぁそれで俺は自分を尾行したり助けたりしてくれた潤に興味が湧いて、一緒にいるようになったんだよ」
「……そうか」
 俺はあづの言葉に頷いてから、首を傾げた。
 何で潤は小学一年生の時に少し話しただけのあづに、そんな世話を焼いたんだ?
「奈々? どうした?」
「いや何で潤はそんなにあづを心配するのかと思って」
「んー何でだろうな。俺もそれは知らないんだよなー。お前がほっておけないからだとは言われたけど」
「……そうか」
 俺は腕を組んだ。
 絶対それだけではないな。
 なにかきっと、とんでもない理由があるに違いない。
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