俺様社長は溺愛本能を隠さない


──「有村」

都筑さんに声をかけられたのは、トワイライト・ミシェルとの打ち合わせが終わり、私が郵便を出しに出掛けて戻った後。
他の四人が続々と帰っていった午後七時。

皆の前では都筑さんに素っ気なく接し、わざと忙しくしていたからか、全員帰ってから改まった声で話しかけてきた。

壁のうち一面ガラス張りとなっている窓のブラインドを下ろしながら、私は「はい」と返事をする。

「おい、有村。こっち向け」

腕を掴まれる前に、私は挑発的に彼の方を向いた。

「何か」

「さっきの話だ。なんで婚活なんかするんだ。しかも俺に黙って」

まだそれを言うか。黙っていたわけでもない。それどころか簡単に口を割ったじゃないか。

「そろそろ私も結婚適齢期ですから。言ったでしょう、親がうるさいんです。仕事に支障は出しませんよ」

「ダメだ。支障は出る」

「出ませんよ! 都筑さんに関係ないでしょう!」

都筑さんを好きだった期間だって、仕事はきちんとやってきた。
こんな口出しをされる覚えはない。

持っていたブラインドの紐を投げつけたが、それは彼に当たることなく定位置に戻っていく。

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