俺様社長は溺愛本能を隠さない

朝の事務所宛のメールを確認し終えた段階で、その日の連絡事項というのは無限に更新されていく。

「佐野さん。サワダ化粧品の打ち合わせ十一時からですからね。そろそろ準備して下さい」

「はーい」

「堤さん。フラワー飲料のサンプルボトルのデッドラインもうすぐですよ。そろそろ会議にかけましょう」

「そうだよねぇ……」

「若林君はモードレコードのデザイン案どうなってますか。あそこの広報担当さんはダメ出し厳しいですよ」

「うーん、なんとかします」

「金沢さんは……いつも通り順調ですね。お疲れ様です」

「うん。有村ちゃんも、いつもの聖徳太子、お疲れ様」

四方に確認を入れた後、金沢さんに『聖徳太子』と言われてため息が出た。

都筑さん含めデザイナー五人全員のスケジュール管理なんて、そろそろこっちもパンクしそうだ。

皆が座ってPCと向き合ったり、眠ったり、空想したり、インスパイアのためだとかで外に遊びに行っている中で、私だけがこの事務所の中を駆け回っている。

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