俺様社長は溺愛本能を隠さない

女性は「はぁい」と返事をしてラウンジに戻っていった。
襟や袖にレースのついたワンピースの後ろ姿は、私とはまったくタイプが違っている。

……なに。誰なの?
嫌な予感がする。

「……可愛らしい方ですね」

「芸大時代の後輩だよ。ラウンジで食事する約束なんだ。悪い、また今夜電話する」

頭に手を乗せられ、撫でられたが、私はそれを腕で払った。

「有村?」

仕事って言ってたくせに、本当はあんなに可愛い後輩とホテルラウンジでデート……?

そりゃ、まだ私と付き合ってはいないから文句は言えないけど……私に告白した後すぐ、そこに戻るってどういう神経よ。

もうアフタヌーンティーの時間は終わっているから、おそらくディナー。
ただの後輩と、ホテルラウンジでディナーなんてするわけがない。
というか、ディナーの後は……?
わざわざホテルで会うってことは、まさか……。

……聞けない……。

「電話は結構です」

「なんで?」

聞きたくないっ!

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