俺様社長は溺愛本能を隠さない

「私、急いでいるので。また明日」

「おい」

引き留める都筑さんを振り切って逃げ出すのは、これで何度目だろう。
さすがに女の子を待たせているからか、都筑さんはホテルから出てまで私を追いかけては来ない。

ああもう!

あり得ない!

さすがに女の子とのデート中に口説いてくるような無神経なことをされたのは初めて。
都筑さんなんて仕事ばかりしているから、てっきり “お手持ちの女の子” はいないと思っていたのに。

しっかりいたのね!

『有村に触れるのは俺だけがいい』
『好きだよ。大切にする』
『男と会うな』

あんなこと言っておきながら、自分は女の子と会ってるなんて……。
しかもそれを悪びれる様子もないし。

やっぱり私と都筑さんの価値観は違いすぎている。
特に恋愛においてはズレまくりだ。

あの子は都筑さんと合っているのかもしれない。
あの難関芸術大学の後輩だと言っていたから、とても優秀なはず。
それでいて可愛くて、お洒落で。
そもそも、私は都筑さんとプライベートでディナーに行ったことすらないのに。
どう考えても私より、あの子との方が恋人らしいことをしているように見えるんだけど。

……私、遊ばれてる?



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