俺様社長は溺愛本能を隠さない

指で頬を叩いて、鏡に向かって気合いを入れた。

いつもどおり仕事をしよう。
混乱するばかりで何も整理できていないけど、そうしないと立て直すこともできない。

背筋をのばし、深呼吸。
笑顔を作ってオフィスへと戻った。

何やら騒がしい。
この数分で全員出勤したらしく、都筑さんのデスクに集まっている。

「何かありました?」

私も遅れて、佐野さんの横からひょっこりと輪に入った。

「ああ、有村さん。新しい社員さんですって」

「……え……」

説明されながら目にしたのは、デスクに立つ都筑さんの隣に女性が立っている光景。

それが昨日のデートの子だと分かった途端、私の胸は発作のように痛みだした。

……なんで?

「今日からお世話になります、桃木(ももき) (ともえ)でぇす。この度、都筑さんの熱ーいご要望を受けまして、皆さんの秘書としてお手伝いすることになりました。よろしくお願いしまぁす」

は……?

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