俺様社長は溺愛本能を隠さない
桃木さんの物は何も用意されていないため、私が一から余っている備品をかき集めて簡易的に彼女のデスクを作った。
というか、都筑さんは連れてきたくせに何も関知しないなんて無責任すぎる。
都筑さんのワガママ以外にストレスはなかった職場なのに、妙な出会い方をした桃木さんを隣に置かなければいけないなんて、これからは常にストレスとの戦いだ。
「改めて。秘書の有村莉央です。何から教えていいか分からないけど、とりあえず……オフィスの中を案内しますね、桃木さん」
「あ、巴でいいですよ」
よくないわよ。
無視をして、彼女を連れて席を立った。
まずロビー、三つある会議室、備品室に給湯室の場所を案内し、コーヒーメーカーの使い方と、お茶の淹れ方を説明した。
練習に淹れたお茶を飲んでから次へ行こうと思い、私は桃木さんに紙コップを渡し、「よければ飲んじゃって」と少し待った。
「莉央さんて、綺麗ですよね。大人の女性って感じがして」
さっさと飲んでほしかったのに、彼女はゆっくりお茶をすすりながら、そう言ってきた。
どういうつもり……?