俺様社長は溺愛本能を隠さない

「……あの、桃木さん。悪いんだけど、私のことは有村って呼んでもらえますか。まだ初日なんだし、皆の目もあるので」

冷静を装っても、自分の目がどんどん鋭くなっているのが分かる。
しかし強く言ってはパワハラになるため、私は慎重に言葉を選んで話していた。

「またまたぁ。莉央さん、昨日も会ったじゃないですか」

……やっぱり、掘り返してきた……。

「……そうですね」

「都筑さんとお話してましたよね。莉央さんって、都筑さんとどんな関係なんですかぁ？」

「……ただの秘書です」

「ふーん、それだけですかぁ？」

手に汗が滲んだ。
都筑さんに告白された、とぶちまけてやりたい。
好きって言われたんだから。それは間違いないんだもん。

でも、私は都筑さんとホテルディナーなんて行ったことはない。
桃木さんは、私の知らない都筑さんのことをどれくらい知っているんだろう。
告白されたことなんて、大したことじゃなかったりして。
この子の方が、都筑さんに大切にされていたり……。

「……それだけです。秘書ってだけで、他には何も。昨日も、たまたま会っただけで」

どうしよう、悔しい……。

「そうなんですか。じゃぁ、付き合ってないんですね？」

「……はい」

「やったぁ」