俺様社長は溺愛本能を隠さない
埋め合わせ
──深夜二時、オフィス内は極限まで散らかっていた。
デスクは中心に集められ、そこに散らばる紙やペン、タブレットはもう誰のものだか区別がつかない。
壁際にある休憩用のソファで、力尽きた金沢さんが眠りに落ちた。
「……お疲れ様です、金沢さん」
自分の私物であるブランケットを横たわる彼にかけた。
小さないびきをかき始める金沢さん。
佐野さん、堤さんも席でうとうとしている。
若林くんは手を動かしながら。
都筑さんと桃木さんは、二人でデスクで出来上がったラフの意見交換をしている。
分かったことは、桃木さんがとても優秀なデザイナーだったということ。
まだ無名だからと勝手に新人扱いしていたけれど、センスも良ければ作業も早くて、私は初めて都筑さんのデザインを見たときと同じ衝撃を受けた。
私は秘書として、できることはやった。
何度も交渉の電話をかけ直し、先方は次回打ち合わせの延期、変更にかかる費用の請求をなんとか了承してもらうことに成功。
延期した期日から逆算し、デザイン班も今日やるべきところまでは目処がついたようだった。