俺様社長は溺愛本能を隠さない

警戒心をむき出しにし、深夜二時過ぎとは思えないほどフェミニンな笑顔の桃木さんを睨んだ。
スカートをひらひらと揺らしながら、肩が触れるくらい近くまで寄ってくる。

「若林さんと何話してたんですかぁ?」

分かってるくせに!

「だんまりですかぁ?」

威嚇してみても、そばに寄られると勝てる気がしない。
彼女の反り返った長い睫毛がパチパチと瞬くと、女の私ですら釘付けだ。
男の人がこれをされたらたまらないだろう。
若林君もこの技に引っ掛かったはず。
きっと都筑さんも……。

「……若林君、桃木さんのことが気になるみたいですよ。良かったですね、思惑通りで」

悔しい……。

「ふふ、私、若林さんなんかどうでもいいんです。ねぇ莉央さん。京さんとはどこまでいってるんですか?」

泣きそうだ。

「キスはしました? その先は?」

下を向くと、彼女は鼻で笑って「キスだけみたいですね」と言い当ててきた。
図星でさらに追い詰められる。
もうダメ。この子と話していると劣等感でおかしくなりそうだ。
憔悴した私の肩に、桃木さんの手が置かれた。

「じゃあこれで、私も同じですね」

彼女はそう言って背伸びをすると、肩を引き寄せ、私の唇にキスをしたのだ。

< 95 / 110 >

この作品をシェア

pagetop