俺様社長は溺愛本能を隠さない
……いや、ちょっと待て。
桃木さんの柔らかい唇が触れながら、私は混乱で目が回りそうだった。
猫みたいな肌触りの彼女の体がまとわりついてくる。
これはおかしくないか?
なんで私と桃木さんがキス?
混乱しすぎて拒否することを忘れ、されるがままとなっていた。
桃木さんはそれをいいことに、私の手首を壁に押し付け、甘い香りのする唇をさらに押し当ててくる。
「……ん……ちょっと、ももき、さ……」
彼女の睫毛が当たりながらも状況を確認しようと目を開けると、可愛らしい外見とは少し違った、野獣のような眼差しが至近距離にあった。
激しいってば……!
「……や、め……」
怖いよ都筑さん! 都筑さん助けて!
心の叫びが届いたのか、階段を上ってくる足音とともに、「有村ー、桃木ー?」と私達を探す都筑さんの声が近づいてきた。
「んんー!」
キスをされながら呻き声で返事をすると、足音は早くなり、駆け足となった。
「有村! どうした!」
ドアを開けて入ってきた都筑さんは、「は!?」と声をあげた。
いやね、私もよく分からないんだって!
いいから助けて!
しかし都筑さんは今まで見たことがないくらい怖い顔に変貌し、体を大きく振りかぶって間合いに入ってくると、勢いよく私から桃木さんを引き離した。