希望の魔法使い
体育館から校庭にまで響く生徒の声。
そんな驚く声の中1人の教師が声をあげた。
「もしかしてお前…」
ぐるぐるメガネにマスクをつけて素顔がよく見えない教師が近づいてくる。
「はい…?」
白衣を着たその教師が少し驚いた様子を見せた。
「…今日転入してくるっていう生徒…だよな?」
確認するように美月に問いかけた。
「はいっ」
そんないい返事をしたのもつかの間。
美月の後ろで鬼の形相をした人物が立っていた。
それに気づいた教師。
「あっ…学園長先生…」
「へっ?」
「お前はこんな所でなにをやっとるんじゃ!」
振り返ってしまったが最後。
とても怒っている。
それもそのはず、来たら学園長室に来いと言われて行ってないのだから。
「全く…天井まで壊しおって!行くぞ。渚先生、後は頼みますぞ」
「あっはい」
嫌がる美月をよそに腕を引いて歩き出す学園長。
「お、おじいちゃん〜!」
その一言で美月は更なる爆弾を落とした。
本日2度目の全員一致の驚く声。
そんな声の中、学園長に連行される美月は体育館を後にした。
「まったくお前は何をしとるんじゃ!学園長室にも来なければ学校まで破壊させおって!」
すぐさも学園長室に着くと説教が始まった。
「うっ…ごめんなさい…」
学園長の怒鳴る声が響く。
こののどか学園の学園長で美月の祖父にあたる綾小路一也《あやのこうじかずなり》は元四貴族《よんきぞく》でありこの学園を若かりし頃に創立した人物。
(あぁ…転入初日からやってしまった…)
「とにかく、今日からお前は1人前の魔法使いとして四貴族《よんきぞく》となったのじゃその自覚を持て」
そう、のどか学園に通うからには生半可な気持ちではいけない。
そして四貴族《よんきぞく》としても。
「お前のクラスはここだ、先程いた伊集院渚《いしゅういんなぎさ》先生のいる桜《さくら》クラスだ」
「あ、さっきの男の先生の…」
「朱音と涼太はもう会ったからわかるな」
学園長は少し黙り、続きを話し始めた。
「…四貴族《よんきぞく》は全員バラバラのクラスだ」
美月の様子を見ながら話を続ける。
「クラスは朱音が隣の梅《うめ》クラス、伊澄が桃《もも》クラスで涼太が李《すもも》クラスだ」
高校の学校にしては物珍しいクラスの名前である。
「推薦状は持ってきたな?」
そう言われ美月はカバンから書類を取り出した。
「うん、はいこれ」
「孫とは言えどちゃんと形はとらんとな」
そういいながら書類を受け取ると学園長は美月と向き合った。
「ここに通うということは…美月、わかっておるな」
「…もちろん」
そう言い残して美月は学園長室を後にした。