希望の魔法使い
辺りは静まり返る。
体育館にいる全員が少年に注目した。
先程の大きな悪魔を消した少年がため息混じりに口を開く。
「…はぁ…やっと見つけた」
ぽつり、そう呟いた。
すると学園長が少年に話しかける。
「…伊澄、あの悪魔どこで見つけたのじゃ」
伊澄と言われた少年は学園長の方を見て答えた。
「女子寮の方、暴れてこっちにきたから女子寮半壊してるかも」
女子寮まで壊されたか…と頭をかかえながら学園長は杖を取り出し白く光らせた。
「…偉大な魔法 《グレートマジック》」
辺りが光り壊れた天井や床がみるみる修復されていく。
生徒達は目を見開いてその光景を見ている。
魔力の高い魔法使いしか使えない魔法だから魅入っているのだ。
「…禁忌の魔法《タブーマジック》も偉大な魔法《グレートマジック》もどちらも限られた優秀な魔法使いしか使えない…難儀なもんだな」
いつから居たのか渚先生が美月達の近くでそう呟いた。
「せ、先生いつの間に…」
「優秀なのも困りもんだな、西園寺家の御曹司、とか」
そう言われ伊澄の方を見て美月はどきりとする。
その瞬間大きな声が被さった。
「いっ伊澄様ぁ!どちらにいらしたんですか?私とても探したんですよ!」
そう、莉真の声。
「…えっ……!!!???」
美月は少年の腕をぽんぽん叩いて説明を求める仕草をした。
「…いや、莉真は、基本荒いんだよ…伊澄の前以外では…」
「す、すごい変わり様…!」
美月は驚きを隠せない表情だが周りの生徒や先生達は慣れている様子。
「伊澄様、今年も桃クラスのクラスメイトとして仲良くして下さいねっ!あ、もちろんクラスメイトとしてじゃなくても…」
と、もじもじと小さくなっていく猫なで声で話す莉真に伊澄はそれより、と話を遮った。
2人は普段からこんな感じなのだろうか。
「俺、あんたの転入認めてないから」
唐突に、美月に向かってそう言った。
「え…えっな、なんで…!?」
美月は唐突にそんな事を言われ訳の分からないという顔をした。
「大して強くもない魔法使い、この学園に相応しくないんじゃないの」
「なっ…わ、私だって四貴族《よんきぞく》なんだから少しは…!」
そう言いかける美月に伊澄は言葉を被せた。
「あんたが四貴族《よんきぞく》になるなんて有り得ない」
なんで、そんな事言うのか。
ぴしゃりと言い放たれた美月は口を噤む。
そして息を吸って言った。
「…私の自分の魔法《オンリーマジック》も知らないくせに」
そう言う美月に学園長が話を遮る。
「…召喚悪魔が活発化したのはここ数ヶ月だが出はじめたのは数年前…とにかく、転入生の紹介はした、各自教室に戻るように。後は頼みますぞ、渚先生」
「はい」
こうして生徒達はは各クラスに戻って行った。
それぞれの違和感をかかえて。
…歯車はもう、廻り始めていた。